採択されるものづくり補助金申請書のポイント3選
【ものづくり補助金採択ポイント概要】
ものづくり補助金が採択されるポイントを教えて、とよくお問い合わせを頂きます。
まずは、当たり前ですが補助対象者か否かを確認して下さい。日本国内の中小企業者が補助対象者です。製造業であれば資本金3億未満か?従業員は300人未満か?これに該当しても親会社が大企業であれば対象外となります。なお、これはなぜか公募要項に書かれていないのですが、個人事業も補助対象です。
次に、業種です。製造業だけでなくサービス業も対象ですが、風営法上の規制がある業種は対象外となります。
また、申請書は認定支援機関の確認がされた確認書の添付が必要です。認定支援機関とは、正式名称を経営革新等支援機関と言い、中小企業者が安心して経営相談を受けられるように国が認定しているものです。銀行などの金融機関、税理士・公認会計士などのいわゆる士業、コンサルタントなど、専門知識や実績が一定レベル以上の者が認定されています。平成29年10月時点で全国で25,000社が認定支援機関として登録されています。経済産業省ホームページでも確認できます。この確認書は金融機関の場合は発行までに1か月近く掛かることもあるので、早目に相談しましょう。
ものづくり補助金は実は公募要項で審査項目が公表されており、これも見逃してはいけないポイントです。大事な箇所を抜粋します。
・新製品、新技術、新サービス
・隠れた価値の発掘
・課題が明確で、達成度の考え方を明確に設定していること
・課題の解決方法が明確かつ妥当で、優位性が見込まれるか
・事業実施のための体制、財務状況から補助事業を適切に遂行できるか
・成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有するか
これらを総括しキーワードを挙げると、「新しい」「優位性」「実現性」「具体性」です。
今ある課題を→自社の強みを活かし→解決することで→革新的な事業となる、というストーリーにするのがポイントなのです。
これまで、ものづくり補助金の採択のポイントを網羅的に説明しました。
ここで、これらのポイントの中でも特に重要な点を三つに厳選して、詳しくご説明します。
【ものづくり補助金採択のポイント3選】
1、会社の強み
実はものづくり補助金の申請書で一番大切なのは、この会社の強みです。
え?事業の新規性や優位性が大事なんじゃないの?、と思われたでしょう。そうなんです、そこが盲点なのです。
ものづくり補助金の申請書を作成する皆さんは、公募要項やセミナーやネットなどで情報を集めます。そこで、新規性や優位性が大事だと思い(実際そう書いてますので仕方ないのですが)、そればっかり強調するのです。
どれだけ新しい事業なのか?他社よりどれだけ利益率が高いのか?
もちろん、新規性や優位性も大事です。
でもそれって、どんな会社でも新規性や優位性が生まれるのでしょうか。
例えば、当社のような税理士事務所が完全ペーパーレスをテーマにしたとします。
大阪では初めての事業だとします。ペーパーレスにより他の税理士事務所と差別化でき、優位性も確保できるかもしれません。
あなたが審査員の立場であれば、合格点をつけますか?
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おそらく低い点数を付けるのではないでしょうか。そうなんです、これだけでは不採択になります。なぜならそれって設備さえ設置すればどんな税理士事務所でも出来ますよね。すぐに同業他社に真似されるような事業は新規性はあっても優位性はありません。「なんだ、ただ設備だけ設置すれば効果が発生するのか」と審査員に思われたら試合終了です。
ではどうするか。
当社だから、当社が設備を導入するから、新規性も優位性のある事業が出来るんだ、という流れにしないといけません。
そのために、当社が既に有している強みを、まずは強調しなければなりません。それがスタートです。
繰り返しになりますが、その設備を設置すれば達成できるものは、革新的とは言えないのです。冷静に考えるとそう思いますよね?
先ほどの税理士事務所の例によれば、以下のようになります。
『当社は開業して10年、一貫して中小企業の資金繰り支援をしてきた。記帳代行・税務申告など一般的な税理士業務はもちろん、銀行融資、クラウドファンディングなど、資金繰りの分野に特化し、中小企業が本当に必要としている情報の提供、相談などを受けてきた。お陰様で昨年法人化を果たし、大阪を中心に250社の中小企業と顧問契約を結んでいる。社員も大半が30代と若く、税理士2名を含め9名体制である。』
後は、会社の雰囲気や業務内容のわかる写真を挿入します。これもとても重要です。百聞は一見にしかず、です。例えばこんな感じで作ります。
とはいえ、うちの会社に強みなんて無いよ、とよく言われます。いえ、絶対にそんなことはありません。ただ、自社の強みは意外と自社の中にいるとわかりにくい、のは確かです。
そこで、着眼点をお教えします。「なぜ当社に注文があるのか?」という視点で考えてみて下さい。
納期なのか、技術か、立地なのか、営業力か、長年の信用なのか、あるいはそれらが複合的に作用しているのか、得意先が評価して注文している理由が、自社の強みなのです。
どうしてもわからなければ、仲の良い得意先に聞いてみるのも一手です。「なぜ当社に注文をくれるのですか?」と聞いてみると、思ってもいなかった答えが返ってくることもあります。
出来るだけ具体的に、例えば『納期と品質』という答えが返ってきたとしたら「納期は他社と比較して何日くらい早いですか?品質は不良率ですか?」と掘り下げて聞ければ完璧です。
2、課題
課題とは自社が抱える課題です。今どんな問題意識をお持ちでしょうか。これもすぐに答えられる方はとても少ないです。
こう考えてみましょう。例えば、どんな業種でも「利益率が低い」とよく聞きます。
この「利益率が低い」を掘り下げていきます。御社にとってどのような要因が考えられますか?
製造業であれば「製造スピードが遅い」から人件費が余分に掛かったり、無理をして歩留まりが下がり、「利益率が低い」場合もあります。この場合は、製造工程において、どの部分に障害があり、そのボトルネックの部分を取り除くことで製造スピードを向上することが出来るのではないでしょうか。
また、外注依存も挙げられます。過大な外注費や運賃、更に外注先のクオリティを受け入れるしかない外注工程を内製化することで、利益の確保や納期の短縮に繋げられませんか?
次に考えられるのが、そもそも受注単価が低すぎる、というケースもあります。この場合は異業種、それも今後伸びるであろう分野への進出を検討する、という内容もグッドです。例えば、自動車部品を製造しているが、利益率も低く今後の電気自動車の普及を見込むと部品点数の減少も確実です。今ある技術を活かし、医療・食品・航空機・電池・ロボット・Iot分野へ進出、という青写真を描けると、採択に近づきます。
製造業以外でも考え方は同じです。食品卸売業を例に出すと、同じく利益率が低く、かと言って原価率を下げると得意先は逃げてしまいます。削減できる経費はどこかと考えても見当たりません、仕入以外の大きな経費は人件費、家賃、運賃、です。社員の一日の行動を見直してみると、得意先の飲食店への配達までの準備に明け方から昼近くまで追われている現状があります。これは小口の得意先が時間もバラバラに、しかもFAXで注文してくるので、その整理に時間を要しています。では、注文方法をインターネット上で集計し、配送伝票に自動で反映させるシステムを導入するとどうでしょうか。空いた時間を更なる新規開拓の時間に充てることが出来ます。
このように、「利益率が低い」→なぜ?と考えることで課題は見えてきます。
これでもなかなかアイディアが浮かばない、という方に、もう一つの着眼点をお教えします。
それは、課題=ニーズという点です。
苦情も含めた得意先からの声を思い出してください。
「こんな商品作れないかな?」
「(他業種から)うちにも卸してくれない?」
「昨日FAXで注文をしたのに連絡がない」
「注文システムの使い勝手が悪いから他社に乗り換えた」
「もう一日納期なんとかならない?」
「もう0.2mm精度上がらない?」
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普段は耳を塞ぎたくなるようなフレーズですが、実はこれが得意先のニーズそのものです。
これが御社にとっての課題なのです。
強みでも同様のことを述べましたが、課題も写真や画像を使って、わかりやすく説明してください。そして、0.2mmなど具体的に数字を使って、審査員に「この会社は課題を明確に捉えているな」と思わせることが採択に繋がります。
3、実現可能性
「ものづくり補助金が不採択だった。申請書を見てもらえないか」とのお問い合わせをよく頂きます。実際に見てみると、「これは実現可能性が低いな」との印象を受けるケースが多いです。
例えば、会社自体が債務超過、という場合があります。審査員の立場で考えると、補助金を受ける前に設備資金をどうやって用意するのかな?用意できたとしても事業を遂行できるのかな?と不安になります。では、債務超過や業績の思わしくない会社は最初からものづくり補助金の申請を諦めるしかないのか、という質問にはNOです。この不安に思う審査員の気持ちを解消してあげれば良いのです。方法としては、事業の実施体制の箇所に金融機関からは既に融資の内諾を得ていることを強調する、また認定支援機関を金融機関にする、という手も有効です。実際に債務超過でも、前期赤字でも採択されている事例はあります。
他にも、売上高2,000万円なのに2,500万円の設備を導入する計画がありました。これは正直無理です。設備投資は700万円くらいにはなりませんか。見直しが必要です。
また、社長一人の会社で、通常業務をこなしながら最新技術の習得、ものづくり補助金の事務作業、を行うような計画書になっていると、これも「一人で全てこなせるかな?」との疑念が生まれる可能性があります。このようなケースでは、事務作業は家族の協力者に分担できる、ものづくり補助金の採択実績が多数の認定支援機関を選ぶ、ということで不安を払拭しておきます。
ものづくり補助金の申請書は、提出すると質疑応答の余地はありません。文字通り申請書のみで判断されます。審査員の立場に立って、考えうる不安要素を申請書で先回りして潰しておくことがポイントです。
以上、採択されるものづくり補助金申請書のポイントを詳しく説明しました。これらを踏まえ、採択される申請書を今すぐに作成してみましょう!
担当 玉川、都
06-6360-2801