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某社様

先日融資を断られた社長さんがホームページをご覧になって当社に来られました。

川又社長 「うちはどう考えても良好な会社なんですが・・・」
当社 「そうですか、まずは決算書を見せてください。」
決算書を見ると、つい2週間前に申告が終わったところでした。見ると営業利益段階でわずかながら赤字になっていました。わずかであっても営業利益で赤字というのは印象が良くありません。見てみると、減価償却を限度額一杯一杯100%やった結果、営業利益が大きなマイナスになっていることが一目瞭然でした。

何も100%しなくてもいいのに、ちょっと配慮しただけのことで印象が良くなるのに、と思いましたが、さらにもうひとつ、本来長期借入金(1年以上返済しなくてもいいお金)であるものを短期借入金(1年以内に返済しないといけないお金)にしておられました。これも銀行のデジタルな審査からすれば決して良くありません。

川又社長「うちのメインバンクは○○銀行(某メガバンク)で、25年もの取引があります。」

当社「う~ん、付き合いが長いというのは銀行、特にメガバンクは重視はしません。意味がないとまでは言いませんが・・・・・」
川又社長 「えっ?では、何で決まるんですか?」
当社 「金融庁検査マニュアルに基づく決算書の分析結果です。実は銀行には以下のような格付けを各貸出先にしているんですよ。」

金融庁の信用リスク検査用マニュアルに基づき下記の5つに区分されているんですよ。

(当社が白板に書く)

**********************************

債務者区分

☆正常先

業況が良好
財務内容に問題が無い
創業赤字は有るが事業計画と大幅な乖離が無い
固定資産の売却損等一過性の赤字は有るが短期間に黒字化する
中小・零細企業で赤字となっていても返済能力に問題が無い

☆要注意先

金利減免・棚上げ等貸し出し条件に問題あり
元本返済・利息支払が延滞等履行状況に問題あり
業況が低調・不安定
財務内容に問題あり

☆破綻懸念先

実質債務超過
業況が著しく低調
借入金が延滞状態
元本・利息の回収に重大な懸念有り

☆実質破綻先

多額の不良資産を内包
過大な借入金が残存
大幅な債務超過に相当期間陥っている
事業好転の見通しが無い

☆破綻先

法的・形式的な経営破綻の事実が発生している

**********************************

たった1期だけでも営業利益が赤になったら「要注意先」に入れられてしまうのです。
この会社は、決算書を作る際にちょっと気をつけておれば「正常先」になったにもかかわらず、減価償却を100%やってしまったがために「要注意先」に入れられてしまった可能性が高いことが決算書を見た結果わかりました。そして、「要注意先」ランクに入ってしまったがために、銀行が「貸倒引当金」という実体の無い経費を決算書上で表現しなければならず、銀行から見た経営状況を悪くしていました。たとえば「要注意先」は、銀行によって違うのですが、貸倒引当金を、貸出額の5~20%を計上しなければならず「要管理先」なら20%~60% 「破綻懸念先」なら100%の貸倒引当金を計上しなければいけません。ちなみに赤字3期連続または繰り越し損失は、「破綻懸念先」となり、貸倒引当金は100%計上になります。融資金額残高と同額の赤字になるので今後融資を受けられるわけがありません。また「破綻懸念先」にランクされてしまったらサービサーと呼ばれる債権回収会社に売却されてしまいます。つまり、銀行が大損を承知で他に債権を売り飛ばしてしまうような、どうしようもないランクに入った、ということになります。

さらに社長への説明を続けました。

「融資できるかどうかの審査の基準のひとつとして「N値」というのが銀行にはあります。」
「N値?」
「ええ、N値です」

(白板に書く)

N値 = (長期借入金 + 短期借入金 - 現金預金 - 運転資金) ÷ (経常利益 +減価償却)

そして、ここでいう「運転資金」というのは・・・・・

売掛金 + 受取手形 + 在庫(棚卸) - 買掛金 - 支払手形 になります。

社長 「実にややこしいですねー」
当社
「一見ややこしそうに見えますが、決算書を見れば一目瞭然なので、その数字を拾い出すことさえできればこれくらいは簡単に計算できますよ。」

このN値は、
メガバンクは・・・・・N値が「8」以内だとまずまず、とみる(=理屈の上では8年あったら現在の借金が返せるという状況)

地銀は・・・・・・・・・・N値が「10」以内だとまずまず、とみる(=理屈の上では10年あったら現在の借金が返せるという状況)になります。

当社 「社長のところは、メインバンクが地銀でN値が11なので、半年後の決算までにN値を下げることを考えないといけません。そのためには、融資は早く返済してしまう、ということが出来れば一番良いのですが、それは出来ないでしょうから、決算書の勘定科目を見直すだけでも良くなります。それに先に申し上げた減価償却と短期借入金の処理を変えるだけで格付は上がりますからね。」

このことが社長の腹に落ちるのに少し時間がかかりましたが、理解してからはこの社長は早かったのです。次期の(半年後の)決算書を作成する際に、どういう形を理想とするのか、目標とする決算書のイメージを作ってほしい、という要望のもとに、一緒に作業していきました。そして、社長が十分納得出来ている数字目標が一度出来てしまうと、その方向に少しずつ向かっていったのでした(この方向に向かう過程で、実はかなりの紆余曲折があるのだが、ここでは割愛します)。
努力が報われ、半年後、ほぼその目標決算書通りになった結果、希望額以上の融資を受けることが出来たのでした。

ポイント

決算書を作る時に「ちょっとしたこと」に注意したら融資可能な会社になるケースは多い。
■自社のN値くらいは把握しておかないと話にならない。
■決算書を作る際に、以下のことは金融機関が嫌がるので何としても避けるべき
 ・減価償却をまったくしていない
 ・棚卸の明細が不明確
 ・仮払金の内容が不明確
 ・前期と比べて未払金が不自然に増減している
 ・売掛金が前期比較で明らかに不良化しているのがわかる
 ・決算期によって勘定科目の計上方法が違う

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